morimoノリノリ

趣味は美術・工芸品、食べ歩き、お洒落です。気分が乗った時だけ思いを書き残します。

緒論

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十八世紀は十七世紀から輪郭だけ傅達されていた世界形象(ウェルトビルト)を完成した。宇宙は機械的出来事の合則性の中(ゲゼッツメッシツッヒカイト)にも個人的及び社会的生活の秩序の中にも同じように出現する統一的に組織された連関として理解された。全体の調和はその最後の支持をあらゆる有(ザイン)の統一的根拠としての神的存在者(ゲットリッヘス・ウェーゼン)の中に見出した。かくして此の世紀の人間は彼の生活理想を確実な基礎の上に建てた。彼は一定の課題を彼の人生の中に於いて遂行しようとする思想を固く持した。そして彼は確信を以て彼の義務遂行に対する彼岸の中に於ける報酬を信じた。行動に対する指導を理性が与えた。理性によって彼は自己を他の動物より高く感じた。そして同時に、自己が此の一層高い職分に値することを証明する義務を感じた。かくしてこれ等の人達の生活の仕方は、直線的な堅実な印象を与える。人は規則を圧迫と感じなかった。人はそれに服従した、彼自らの性質(ナトウール)に従うという意義は強制の感情を成立させなかったからである。然しながら理性の規定の意識は又更にかかる純粋な実践的な目標定立の外へ導いた。理性の規定は魂に独特な動揺を与えた。人間の職分であった宇宙の思惟的観察は、夢幻的な永遠的なものの崇高な感情を与えた。現実がかくも無限に多状的なものであって然もかくも統一的に組織された全体であることを観察して人は、自己の本質の向上を感じた。他方、あらゆる人間の下に現存せる理性的素質の思想はあらゆる地上の住民を唯一の大きな団体に結合した。人は人類及び人類の権利の為の感情に溺れた。抒情的な感動と革命的な熱情とが此の源泉から生じた。此の時代は、悟性によって獲得された理想が感情によって把捉され、ついで後者が自己の根源に背くという珍しい光景を示す。理性によって最高の形式を与えられた人間の性質は此の力の此の一面的固定に抵抗した。この最も特有的な本質を直接に感情的に掴もうとする要求が、従ってあらゆる悟性支配に対する戦いが起こった。そして今や感情が「妥当せる規範」を転覆しようと企てるという争闘が生じた。他方では感情はこの規範に非常に密接に結合していたのであるが。人は感情を奔出させた、そして感情は無限的思慕の特性を得た、悟性が無限的なものへのかかる向上を教えたからである。然しながら人はかかる不安な内心から現れた力を自ら恐れた。自由で不自由、確実で不確実なのが十八世紀の人間である。カントもまた此の時代の子であった。